スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

一般意思2.0じゃなくって一般意思0.5

一般意志2.0 ルソー、フロイト、グーグル一般意志2.0 ルソー、フロイト、グーグル
(2011/11/22)
東 浩紀

商品詳細を見る


年末に東浩紀「一般意思2.0」を読んだ。職業柄ソーシャルメディアの地方自治領域への応用に関心があるので、楽しんで読んだんだけど、なんだろう?このキツネにつままれたような読後感は。。

本書のタイトルにもある「一般意思」は、個人の意思の集合体である「全体意思」とは異なり、つねに正しく、つねに公共の利益に向かうものであって、発案者はルソーである。ルソーによれば、立法者はその「一般意思」を体現することで、国民を正しい方向へ導くとされている。

この本の出発点は、この数百年前の「一般意思」という概念が、ツイッターやらグーグルなどの情報技術の革新によって、結構な部分まで再現できてるんじゃねえのという発想にある。簡単に言うと、それは一種のデータベースのことらしい(これを一般意思2.0と呼ぶ。詳細は本を読んでね)。

ルソーの理論では「一般意志」を解釈する超越者としての立法者が必要とされる。従来から、これが独裁者の出現を容認するものとして批判されてきた。でも、著者によると、「一般意志2.0」は具体的なデータベースとして存在しているから超越者は存在せず、問題にならないとのこと。

でも、ここで最初の疑問がわく。「一般意志2.0」を実装するためのデータベースの設計者は誰なんだろう?

あるべき一般意志2.0データベースをこれから作るor仕様変更するとする。通常、あるシステムの仕様を確定する過程では、いろんな判断が必要になるものだ。経営的な判断から政治的な判断。関係者の利害が衝突することもあるだろう。

その場合、ルソーの考えを忠実に解釈すると、その仕様を確定するのは一般意志そのものであるべきだと思う。

とすると、「一般意思2.0」でも、どういう仕様にしたらいいかという「一般意思」を解釈するデータベース設計者が必要になって、データベース設計者による独裁が発生したりしないだろうか。要は、「立法者」による独裁はないかもしれないけど、「データベース設計者」による独裁は発生しうるんじゃねえの?と。

他にも疑問はいっぱいあるんだけど、一番わけがわからないのは、東さんが途中まで熱っぽく語ってきた「一般意思2.0」に対して、突然「袂を分かつ必要がある」と言い出したところだ(p170)。

その理由は、一般意思がいかに移り気で暴力的かこの2世紀で思い知ったからだという。

この文章を読んで「はあ???」と思ったのは僕だけだろうか。「一般意思」は間違うことがないというのが大前提だったはず。暴走する「一般意思」なんてものは、「一般意思」ではない。東さんの主張する「一般意思2.0」が、その程度のものならば、ルソーのいう「一般意思」をバージョンアップさせたものとは言い難い。どっちかというと、出荷前のテスト段階。「一般意思0.5」くらいが適切だろう。

本書の後半はもっとよくわからなくなってくる。どんどんと本書のタイトルとかけ離れていていって、どっちかというとフロイトの「無意識2.0」という名前のほうが適切なように思う。

たぶんキツネにつままれた読後感は、こんな感じでいろんな学者の名前が出てきて、なんか説得力があるように感じるんだけど、よく考えるとわからないってな内容が続くからなんだろうな。

とまあいろいろ書いたけど、読みながらいろいろと考えさせてくれるという点でとても楽しめる本だし、思想書というものを読んだことがない僕でも、読みやすい文章でかかれている。総合的には読んでよかったと思える本でした。

スポンサーサイト

文明論から考える脱原発(銃・病原菌・鉄)

せっかく日本が獲得したトルコの原発開発の優先交渉権が白紙に戻る可能性が出てきた。
トルコからすれば、管さんの迷走ぶりを見れば日本の原発政策の不安を感じざるを得ないだろう。

鳩山さんといい菅さんといいここ最近圧倒的に無能な指導者が続いてる。一方、ヨーロッパの指導者であるサルコジ、メルケルなどは原発政策などを見てもリーダーシップを発揮してそうに見える。

西洋文明に追いつき追い越せで頑張ってきた日本だが、世間に広がるこの閉塞感・停滞感を考えると、ひょっとして日本人は、ヨーロッパ人と比べて指導力や統率力という面で劣ってるんじゃないか。今までがむしゃらに頑張っていた日本人という人種の限界が、ここにきて露呈してきているような気がしないではない。

結局、いま世界を支配しているのは西洋文明なのだ。東洋文明やアフリカの文明が勝利することはなかった。では、現在の西洋文明の隆盛は、何によってもたらされたのか。ヨーロッパ人がアジア人やアフリカ人よりも人種的に優れているからだろうか。

そこで読んでほしいのがこの本↓
銃・病原菌・鉄〈上巻〉―1万3000年にわたる人類史の謎銃・病原菌・鉄〈上巻〉―1万3000年にわたる人類史の謎
(2000/10/02)
ジャレド ダイアモンド

商品詳細を見る

文明格差の究極的原因は何か。1万3000年の歴史を振り返って追求した大著だ。作者はアメリカ合衆国の進化生物学者らしい。

この本は上下2冊の分量だが結論は簡単。食料生産をどれだけ早く始められたかが文明発展の格差の究極的な原因だと作者はいう。それには大陸の大きさや地形が影響している。特に重要なのは大陸の広がり方の方向性だ。南北より東西方向へ伸びる大陸のほうが有利なのだ。なぜそう言えるのかはぜひ本書を読んで確認してみてほしい。読み進めるほどに知的な興奮が高まること間違いなしだ。

つまり、作者によると、現在の西洋文明の隆盛は、たまたま地理的な要因でそうなっているだけのこと。日本や中国の東洋文明が世界を支配しきれなかったのは人種的な問題ではなく地理的な問題だったのだ。

・・・

ちなみに、この本の中には少ないけれど日本への言及もある。西暦1600年ごろから1800年ごろまでの間、日本は銃火器を放棄している。銃火器の放棄そのものは、人類の技術史においてとくに珍しいことではない。しかし、その他の地域では、このような銃火器の放棄は近隣諸国の脅威もあって長くは続かなかった。日本が長きにわたって新しい強力な軍事技術を放棄し続けられたのは、人口が多く、孤立した島国だったからである。このように、孤立した社会の中では、技術の後退といえる現象は珍しくないそうだ。

そう考えると、日本が原子力技術を放棄するのは文明論的には想定の範囲内。もっというと、日本は憲法9条で武力を放棄しているが、これだって文明論的にはよくあることなのかもしれない。脱原発論者や9条信者を攻撃しているみなさん。彼らを攻撃してもしょうがない。悪いのは彼らではなく、日本列島の位置なのだ。


テーマ : 文明・文化&思想 - ジャンル : 学問・文化・芸術

(書評)2010年のベスト1

2010年もあとわずか。
備忘録として今年読んだ本のベスト1を紹介しておきます。

デフレの正体  経済は「人口の波」で動く (角川oneテーマ21)デフレの正体 経済は「人口の波」で動く (角川oneテーマ21)
(2010/06/10)
藻谷 浩介

商品詳細を見る


この本の面白さは推理小説を読む面白さに似ています。

日本を蝕むデフレの本当の原因は何なのか。

中国・韓国などの台頭によって日本の国際競争力が下がってしまったからか?
東京にのみ一極集中し、地方経済が疲弊してしまったからか?
政治が混迷し、一貫した成長戦略に欠けていたからか?
日銀がお金を刷らないからか?

サムソンやLGの躍進は著しいし、北海道夕張市の破綻に代表されるように地方経済は悪化の一途を辿っている。しかも、こんな緊迫した経済状態にも関わらず、民主党は政治とカネの問題で迷走し続けている。

そんなニュースばっかり見ているから、てっきり僕もこういうことが積み重なってデフレになっているんだと思い込んでいた。しかし、著者によるとそれらは「ピントのずれた処方箋」であって、時間とエネルギーを消費するだけなんだそうな。

では、デフレの本当の原因は何か?

それは、「現役世代の減少」(少子・高齢化ではないのがミソ)だと著者は断言する。

この結論を導くまでが本当に小気味いい。世間ではあまり注目されない指標を取り上げ、その事実を徹底的に積み上げることでこの結論を導いている。しかも、その他の「ピントのずれた処方箋」を論破する様は、まさに名探偵コナンのようだ。

このあたりはネタばれ?になるのであえて触れませんが、ぜひ本書を買って味わってみてください。

ちなみにamazonの書評を見てみると、何故かこの本をバッシングしている人がいるようだけど、僕にはその人の気持ちが理解できない。著者が言っていることは、単に事実を積み上げればこうなったよというだけだ。もし反論したいなら、著者の挙げる事実に誤りがあることを指摘するとか、同じ事実から別の結論を導くとかしたほうがいい。経済学の常識を知らんとかしょーもない批判をする人は、まさに著者が指摘する「演繹」だけで「帰納」ができない人ということなんだろうね。

印象的だったフレーズをひとつだけ。

人口の減少は、国民が経済活動に使える時間の総合計=人口X365日24時間(これを「国民総時間」と仮称させてください)の減少でもあります。

不可避の人口減少に伴い日本の「国民総時間」がどんどん減っていく中で、GDPを成長させるためには、国民一人一人の1時間あたりの生産水準と消費水準をどんどん上げていかなくてはなりませんね。

前者の時間当たりの生産水準は、機械化や生産技術の革新などで果てしなく高めていくことが可能だと思いますが、後者の時間当たりの消費水準に関しては、これを際限なく伸ばしていくことが可能なのでしょうか?


こういう発想は、この本を読むまで僕にはなかった。

人口減少が日本の「国民総時間」を奪っていく!これほど解り易くて怖いセリフはなかなかないよね?

・・・

さて最後になりましたが、ことし1年ありがとうございました。みなさま、よいお年を。

テーマ : 読んだ本。 - ジャンル : 本・雑誌

(書評)2010年のワースト1

僕は面倒くさがりなので、書評を書くのはあまり好きじゃない。

でも、せっかくだから今年読んだ本のベスト1とワースト1だけは記録しておこうと思う。

今回はワースト1の紹介です。

(ただし、ワースト1と言っても、本当に箸にも棒にも掛からないものは、ワースト1にはなりません。一応、内容的には読ませるものに仕上がっているのに、最終的には???となってしまう残念な本、という意味でワースト1を選んでます。)

さて、2010年のワースト1は・・・

残酷な世界で生き延びるたったひとつの方法残酷な世界で生き延びるたったひとつの方法
(2010/09/28)
橘玲

商品詳細を見る


ざっくりとこの本の内容を書くと、

・人間の能力は、身体的なものだけでなく、知能、性格、嗜好にいたるまで遺伝する。

・一方、社会は能力主義で動いていて、しかも、能力主義以外の方法を社会が採用することはない。

・したがって、遺伝的にあまり能力のない人は、いかに自己啓発本を読みまくっても能力は伸びず鬱病になるだけで、能力主義万能のこの現代社会では、成功することはあり得ない。

これが作者の言う「残酷な世界」ということらしい。

このあたりのくだりには賛否両論はあるとは思うけど、記述自体には説得力があるし、事例も豊富なので非常に読ませる内容になっている。

さて、そこからこの「残酷な世界」を生き延びる「たったひとつの方法」が紹介されるわけだけど、それが本当に意味不明。

著者は、薄給のバイク便に命を懸ける若者を例に挙げ、能力のない人ほど、自分の「好き」を仕事にするべきだと主張する。

なぜなら、能力のない人間は、自己啓発本を読んだって能力なんか伸びないし、どうせ無能のままなんだったら、薄給で退屈な仕事(マクドのアルバイトなど)を選ぶよりは、薄給だけど好きな仕事(バイク便など)を選ぶほうがマシだからだ。

ただし、単に「好き」を仕事にしているだけでは、薄給過ぎて体力的にもキツイから、ちゃんとその「好き」を収益化できるような仕組みを考えなければダメだと著者は説く。

・・・

しかし、そもそも収益の仕組み化というものは高度に知的な作業なわけだから、それが出来る人はもともと能力のある人のはずだ。能力のない人は、遺伝的に何をやっても無能なのではなかったか。

結局、この本は、前半と後半で思いっきり矛盾しているのだ。

残酷な現実を直視せよ!と警鐘を鳴らすのは別にいいんだけど、その著者自身が残酷な世界を受け入れ切れていないのではないか。

そんな残念な読後感が残る1冊。

前半は面白いんだけどねえ。。

テーマ : 読んだ本。 - ジャンル : 本・雑誌

上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。